オフィス街と住宅地が混在するエリアにひっそりとたたずむ築100年以上の町家を利用したバー。中が見えない重厚な扉に最初はちょっと緊張しますが、思い切って開けてみましょう。迎えてくれるのは、穏やかな笑顔が素敵な主・羽田高秀さん。家業を継いで現役のご住職としても活躍している本物の"坊主"でいらっしゃいます。作務衣がしっくりきているのも道理。
まずは気になる「なぜお坊さんがバーを?」との質問には、「話せば長いのですが、最初はお寺をボーダーレスな場にしたいと考えて、そこからいろんなご縁があって5年前にこの町家でバーを始めたんです」。扱うのは、国産のクラフトビールと日本ワイン、そして各国のウイスキー。クラフトビール専門店ではありませんが、「地ビール祭京都」の立ち上げからの思いもあり、瓶で常時10種以上、樽生は3種類に絞って順繰りに全国のさまざまなビールを提供。「専門店ではない分、多様なお客様がみえるので、思いがけずクラフトビールと出合ってくださる方も多いんですよ」。あの店に行けばこんな種類があって、あそこにはユニークな店主がいて……と、周りの店を紹介することも多いのだそう。
クラフトビールとの邂逅は人との出逢いに似ている気がします。好みに巡り合えたらラッキー。この日いただいたのは、羽田さんと共に店を守るソムリエの若杜知美さんが大好きだという「南信州駒ヶ岳エール」。エール系で香りがよく、甘さと苦みのバランスが絶妙。なにより飲み口の爽快感が印象的でした。
クラフトビールはディープな存在感があるものというイメージが一新されました。次はどんな味との出逢いがあるのか、ますます楽しみになりました。