木屋町で飲み歩いている知人から、「あそこでビールのおいしさを知ったわ」という声は聞いていました。京都でクラフトビール旋風が巻き起こる前、2010年から営業しているそうです。
店主の上西(じょうにし)芳明さんは、祇園のアイリッシュパブ『ゲール』の店長を務めた後、独立。自身がビール好きだったこともあり、自らの店もアイルランドの黒ビール「ギネス」に力を入れたアイリッシュパブの形態をとりました。そのほか、「初めて飲んだ時、『すごいビールやな!』と驚いた」という「よなよなエール」のリアルエールを始め、ゲストビールを2種類ほど樽生で扱っています。例えば、ある日のゲストは、「箕面ビール」と「伊勢角屋麦酒」。ほかにも、全国のブリュワリーから、上西さんがこれぞと思ったビールをピックアップしています。
まずは、上西さんイチオシのギネスをいただいてみました。
……と、ビールを注ぐ様子がなんだか尋常じゃない!
いったんグラスの半分強まで丁寧に注ぎ、そこから待つこと3分半。
もう一度注ぎ、さらに「待て」状態で合計4分半。
なぜ、こんなに時間をかけるんですか?
「これは"サージング"といって、言わばグラスの中でもう一度ビールを造るような作業なんです。普通の生ビールに使用するのは炭酸ガスのみですが、ギネスの樽生には窒素も使われているんです。この2つをグラスの中で混合させることで、おいしく入れることができるんですよ。そのためには1パイントくらいの大きなグラスが必要。ぜひこのサイズで飲んでほしい」
最初は白〜焦げ茶色だったグラスの中が、徐々に鮮明な黒と泡の白に分かれ、最終的にはシルキーでクリーミーな泡が大草原に降り積もった雪のように漆黒のビールを覆いました。これは見るからに違う!
飲んでみてさらにびっくり。
雑味が一切なく、とてもクリアなほろ苦さと上品なコク。すんなり喉を通りながら、味わいの余韻がじんわり……。ああ、ギネスってこんなにおいしいビールだったんですね……。
そして、しっかりとした泡を作れるからこそできる、ラテアートならぬ"ギネスアート"まで!
泡に三つ葉のクローバーが描かれています。お見事っ!
加えて、こちらでもうひとつ教えてもらったのが、ギネスと魚介類の相性のよさ。
魚介類といえば白ワインや日本酒といった「サラリと飲める酒」のイメージでしたが、意外やこのすっきりとした苦味が、磯の風味ともマッチするんですね。
名物の生牡蠣1個700円〜(この日は鳥取の岩牡蠣・夏輝)ともバッチリ!
上西さんはご実家が料理屋だったこともあり、幅広いジャンルのアテというか料理もお手の物。これも名物の小いものからあげ600円は、一度炊いた小芋を片栗粉をつけて揚げたいわば和風フライドポテト。さっくり軽やかな衣とねっとりホクホクとした芋のバランスが抜群で、ビールが進みます。
飲んでよし、食べてよしの実に頼もしい一軒です。